体系化学・ゼッタイのススメ

『体系化学』のススメ since 2009-01-27

『体系化学』ゼッタイのススメ 最終章

  • written by Naoki Ishino

『体系化学』ゼッタイのススメ ・Comment & Guide 〈3〉



この入試編にいたって、『体系化学』をまっとうに学びきった者がいかなる境地に立ちうるのかが、迫力のある語り口で綴られる。真に〝体系的〟であることを学べば、無機の分野でも単なる知識問題でも、知識を雑学としてではなく、体系的に学ぼうとする主体性がその精神に宿るのである。

私は『体系化学』に威力を入試で確かめることはできないのだから、ここまで事実的かつ論理的に書き記してくれた石埜君には、この上ない敬意と、心ばかりの感謝と(少しばかりの羨望と)を表するものである。

出典: GHSテキスト 『体系化学 セメント&ドリル』 イントロより

bind_free143.jpg

『体系化学』ゼッタイのススメ・最終章 私はこうして登り切った。

入試準備編
 私の場合は、『体系化学』の演習問題の進度とは別に本文の読み込みを進めていたので、読み込み自体はかなり早い段階で終了していた。こうすることによって早い段階から全体像を把握でき、先の展開の見通しがよくなるので、演習問題の進行とは別に読み込みを終了してしまうことをお奨めする
 もっとも『体系化学』のストーリ性に引き込まれる可能性は高いので、誰かに言われるまでもなく「思わず一気に読んでしまいました。」という読者はかなり多くなるものと思われる。「読みたい」と思う時が好機である。どんどん読み進んでいって欲しい。
 読み込みが終了している以上、演習問題をやらない理由はない。授業の進度に関係なくどんどん自分で演習問題を進めて行く
 予習としての演習が終了したら入試の形式に即した問題演習の方法を自分自身で考えなくてはならない。志望校は各自によって違うので、ここは授業の演習とは別に自分で出題範囲・傾向・難易を踏まえて設定しなければならない。この段階で赤本等で過去問に一通り目を通しておくことは非常に大事である。『体系化学』の学習が最後まで進んでいれば、問題の難易度、出題者の意図、合格点獲得までに補充すべき知識等は自力で判断できるようになっているはずである。
 この時点で実際に解ける、解けないは関係ないので気にする必要はない。必要となる演習量・その質、補充すべき知識の量を判断できればそれで十分である。この判断を踏まえて入試演習を設定する。
 計算問題に関しては、『体系化学』で言及されている分野か否かで分かれる。言及されていない分野は化学的思考を有する分野ではなく、単に算数的処理のみが要求されている場合なので、そのような算数的能力を重視する傾向のある大学を受験する場合には、市販の問題集で必要な知識なり解法を補充して割り切って準備すればよい。それ以外の分野は、『体系化学』で直接言及されているか、その知識を持ってすれば問題なく対応できるものばかりである。入試の比重的にはこちらの方が高い。配点ウエイトを加味すれば圧倒的に高い。
 このような分野で「統一された解法」をもって絶大な威力を発揮できるのが『体系化学』の最大の強みであり、特長である。やはり受験参考書である以上、入試本番において得点が期待できるものでなければ受験生はついてこない。その点では、『体系化学』の存在は圧倒的であり、他の追随を許さない。解法が統一されているから、問題に対して迷いが生じない迷いが生じないから、難問が難問でなくなる。もはや難問でないのだから、直線的に素早く処理することが可能になる。それも圧倒的な速さで。これがいかにすごいことか、一度でも試験というものを経験したことのある者であれば理解できるかと思う。
 実際に本番では、あまりのスピードで思考が回転するので、鉛筆がついて来ずに手が震えるほどであった。これが『体系化学』の真の威力である。もし理科2科目であれば、この威力は倍化する。化学で余った時間を、もう一方の科目につぎ込めるからである。時間がギリギリになるように設定している出題者からすると、こんな困ったことはない。時間にゆとりがでると途端に得点が上昇する。誰しも、試験のときに「あと5分あれば・・・。」という状況を経験しているはずである。この「命の5分」を自分でもぎ取ってこれる、それが『体系化学』である。
知識問題は、『体系化学』p279の溶解度積まで自力での演習が終了しているならば入試演習に入って問題ない。入試演習といっても実際に問題を解くことは必須ではない。まずは、過去問から補充すべき知識の量を判断する。その上で、資料集なり辞書本をあたってみる。
 するといかに雑多な知識が重要度も考えずにバラバラに配列されているか実感できるはずである。ここから自分で必要な知識を取捨選択し、まとめていく作業を行う必要がある。自分でそこまでできるかと心配の向きもあるかもしれないが、全く問題ない。『体系化学』にしっかり取り組んでいれば、自力でまとまる力が知らず知らずのうちに養われているからである。実際にテキストの本文はそこまで考えて書かれているからである。
 今まで吸収してきた知識で分類・整理してみればよい。自分でも驚くほどコンパクトにスッキリまとめることができるはずである。「無機まとめノートは作った方がよいか。」というような馬鹿げた質問など、する気にもならないであろう。高校化学「無機の膨大(に見える)知識をA4用紙数枚程度にまとめることができる。
 なぜか、それは『体系化学』の考え方を身に付けていれば「以下同文」ということがあまりにも多いからである。「暗記するべきことが最小限で済む」、これも『体系化学』の特長である。『体系化学』にとってはおまけ程度の特長であるが、暗記の苦手な人が多い理系にあって、いかにありがたい特長であるか、共感してもらえる向きも多いと思う。
 実際に知識問題を解く必要があるかどうかは、この「まとめの具合」で考えればよいと思う。まとめが抜群に上手くいけば問題を解く必要はない。私の場合には実際に全く解かずに入試に臨んだが全く問題なかった。不安がある場合には、ある程度の問題演習を通じてまとめをさらに充実させるなり工夫するなりすれば、それで十分かと思う。くれぐれもこなした問題の数や暗記した知識の量を競うような残念な勉強はしないでほしい。
 とにかく『体系化学』に真剣に取り組んでいれば自然と考える力が身についているのである。計算問題にしろ、知識問題にせよ誰かに問題を選んでもらって受動的に行う勉強ではなく、自分自身で足りない部分を考え補う主体的な勉強ができるようになる。「誰かと同じ問題集をまるごとやって安心感を得る」、そういう勉強はする気にならないはずである。「『体系化学』で○○大学は足りますでしょうか。」、こういう質問もする気にならないはずである。合格にはなにが必要なのか自分で考えられるようになる。これも『体系化学』によって学ぶべき事柄が整理されているからに他ならない。「大系的」にではなく「体系的」に考えるということがどういうことなのか、この『体系化学』を通して是非体験して欲しい。 《了》